[ 009 lullatone Shawn James Seymour ]

ノスタルジックでメロウな心地よいサウンドを届けている『lullatone』

今回は沢山のCM曲やTV番組の楽曲提供なども手掛けている『lullatone』の Shawn James Seymourさんにインタビュー

アメリカで過ごしていた時の話、音楽を始めた時のエピソード、大切にしている想いなど、今に至るまでの ROOTS OF STORY を是非お楽しみください!

ー 父から受け継ぐ、モノ作りへの好奇心 ー

僕は1981年アメリカのケンタッキー州にあるルイビルという町で生まれました。

父と母の3人暮らしで、もの作りが好きな父は休日になると家具を作ったり車を修理したりと、いつも手を動かしていました。

今アメリカで両親が暮らしている家も父がセルフビルドで作った家なんです。

父には必要なものや使い勝手が良くないものがあれば自分で作ったりカスタムすると心地良く暮らせるっていうことを教えてもらいました。

僕が7歳の頃、ルイビル郊外の大きな木がたくさん茂っている森の中のような場所に家族で引越したんです。

一番近くの友達の家まで5kmくらい距離があるような場所だったんですけど、自然豊かなその場所は僕にとって最高のフィールド。

何メートルもある木に登ってみたり、友達と一緒に大きな木の上にツリーハウスをたくさん作ったり、思いつくまま全力で遊んでいました。

自分にとってはどんな道も場所もプレイランドのようなアイデアの宝庫。視点の持ち方でワクワクする世界が広がっていく

中学生になってスケートボードをやり始めてからは、ただの道路も壊れかけた塀や階段も目に飛び込んでくるすべてのものがトリックのインスピレーションにつながって「これを使えばこういうことができるかもしれない」とか、そんな風にいつもイメージしながら歩いていました。

自分にとってはどんな道も場所もプレイランドのようなアイデアの宝庫。視点の持ち方でワクワクする世界が広がっていくのを感じてましたね。

『Ed Templeton』っていう有名なスケーターがいて、彼からもいろんな刺激を受けていました。

スケートボーダーでもあり、フォトグラファー。そしてグラフィックデザインなど、彼が発信するものはどれも新鮮でクールだった。

彼のように有名人ではないけれど、僕の身近でスケボーをやっている人達も、絵を描いたり、映画を撮ったり、音楽をやっていたりとクリエイティブなことを同時進行でやっている人達が多くて、いつもエキサイティングな時間を共有させてくれていました。

高校生になると僕自身も友達と一緒に音楽をやることになって『ポストパンク』バンドをやり始めたんです。

技術的な事はまだ分からないし、もちろんテクニックもない。だけどオリジナルをゼロからクリエイトするのが面白くて。

ノイズやちょっと変わった音を曲に差し込んでみたり、そういうセオリーがないからこそ出来る実験的なことを試しながら自分達らしい曲を作ってました。

でも、メンバーそれぞれの進学のタイミングで住む場所がバラバラになり、バンドはそのままフェードアウト。

バンド自体は無くなってしまったけど1人でそれぞれのパート楽器を演奏して録音したり、録音にエフェクトをかけたりしながら、楽曲制作をマイペースに続けていました。

音楽以外にも写真や映画も好きでフィルムカメラで写真を撮ったり『Wes Anderson』の映画作品にも夢中でした。

彼の『天才マックスの世界』っていう作品に出てくる主人公が高校生の自分にビジュアルが似ていて(笑)

そういうのもフックになったのもあるんですが、彼の映画に出てくるキャラクターやストーリーはもちろん、生き生きとした登場人物や色彩、映像美にも惹かれて。

彼の作品との出会いは写真や映像への興味がより強くなるきっかけになりましたね。

ー高校卒業後の進学はどのように決めましたか?

高校生の時は社会人になったら新聞や雑誌を作る仕事や広告関係の仕事に就きたいなと思っていたので、ジャーナリズムやコミュニケーションについて学べる大学に進学しました。

在学中は『ビジュアルアーツアソシエイション』っていう、創作活動をする時に必要なツールやフリースペースがある芸術施設でアルバイトしていました。

そこでは日々クリエイトしている人と出会う事が多かったので、その展示を観るためにギャラリーへ足を運ぶ機会が増えていきました。

そんなふうにギャラリーに通っているうちにExbitionのBGM制作をするようになって。

作品をサポートする楽曲制作は初めてだったし、当時はまだ機材もマルチトラックキーボードにギターとマイクくらいしかない状態。

カーペットを叩いた音を録音してエフェクトをかけドラム音にしてみたり、カセットテープに録音して少し音にざらつきを持たせてみたり、自分なりに創意工夫を重ねてどう表現出来るかを考えながら制作してました。

今振り返ると、この時の曲作りが『lullatone』のルーツ。実験的な要素のある楽曲作りの可能性にワクワクしていました。

ー『lullatone』はどんなきっかけで始まったんですか?

元々は僕1人でギャラリーのBGM制作からスタートしました。

制作を始めてしばらくした頃、僕の通う大学に妻が交換留学生として入学したんです。

出会ってすぐにパートナーになり、それからは2人で『lullatone』として本格的に音楽活動が始まりました。

『lullatone』の名前の由来は Lullaby(子守唄) + Tone (音色)

僕は夜になると彼女が寝ている側で作曲していて、いつも彼女を起こさないよう制作していたんです。

それで『lullatone』という名前が浮かんで決めました。

アメリカでLIVEをしたりツアーをまわったりしていたのですが、その頃はあえて日本語の歌詞で彼女に歌ってもらっていて。

日本語をわかる人がほとんどいないので、何を言っているのか分からないのがいいなって思ったのと、分からない言葉って『音』として届くんですよね。そういう感覚的な響き方っていいなって思ったんです。

大学卒業後は帰国した彼女が生活する日本へ英語教員として渡り、新しい生活がスタートしました。

ー日本で暮らす中で、アメリカとの違いを感じるときはありましたか?

スケールはやっぱり違いますね。アメリカはとにかく広くて大きい!日本はコンパクトだけど機能的!

スケートボードをしている時のプレイで例えると大きく体を使うような技がアメリカ、細かなテクニックで繊細に表現していくのが日本らしさかなって感じました。

どちらにも良いなって思うところがあって、自分の中に両方の良い所をインプット出来たのは大きい。

『lullatone』の音楽でいうとひとつの音をいろんなエフェクトを重ねて丁寧にブラッシュアップしていく作業なんかは、すごく日本的な作業をしていると思うんです。

そういう意味では今自分が作っている曲は、日本的な要素が割合として大きいのかも知れないですね。

ー曲作りのインスピレーションはどんな風に湧いて来ますか?

これは不思議なんですけど、締切があると良いテンポで曲作りが進むんです。

よく作家の人が「一日4ページでもいいから、とにかく毎日書く」っていってるのを何かで聞いたことがあるんだけど、その感覚に近いのかも知れない。

『やらなきゃいけないから、とにかくやる』

自分を追い込んで楽器や機材を色々と触っているうちに新しい音がふと生まれてりして。

その音がすごく良かったりすると一気にイメージが湧いて仕上がっていくことが多いですね。

偶然から良い音が生まれる事もあって。例えば『Like Grains of Sand in Your Hand』っていう曲はライブ会場のフロアが砂だった時に砂を振動させて音に変えることが思いついて、即興で砂の音も合わせて演奏したんだけど、その時の感じがすごく良くって。アイデアとしても面白かったんで改めて砂の音を録り直してその音を軸に曲が完成しました。

そういう音との出会いってストーリーがあるから、自然とより良い響き方で届くと思うんです。

ライブをする時も『lullatone』の楽曲はチルアウト感のある穏やかな曲が多いので、毎回ではないけれどエンターテイメント性のある表現になるようにしています。

例えば、手作りの楽器を持ち込んでライブをすると音の材料になっているものを可視化できる。

キャリーバックをドラムにした時も「身近にあるアイテムからこんな音が聞けるんだ」って体感してもらえたり、同じ曲でも実際にどんなふうに音が鳴るのかが見えると違う角度で楽しむことが出来ると思うし、そっちの方が観に来てくれて人も楽しいと思って。

ワークショップ感覚のこういうライブの方が心にも残ると思うからライブの見せ方はいつも『lullatone』らしさを大切にしてます。

ー普段はどんな曲を聴いていますか?

『Fugazi』『Pavement』『Jonathan richman』を聴いたりしてます。

最近は中学生の息子と情報交換しながらいろんな曲を聴く事も増えました。

面白いなって思うのが僕が10代の頃に聞いていたミュージシャンの曲を息子も聞いていたりするんです。

でも気に入ってる曲はそれぞれ違ったりする。そういうのが面白かったり、どんなところが良いのか聞くと彼なりのいろんな答えを聞かせてくれたりして、そういう風に聴いているんだと新しい発見もあったり。

そんな音楽の聴き方も良いなって最近は感じていますね。

後は、音楽ではないんですが『David lynch』のYouTubeが最近のお気に入りで気分転換に観ています。

破れた服を縫わずにボンドで直していたり(笑)一日一回ただ数字を言うだけとか(笑)

たわいもない日常のちょっとした遊びをいつもUPしているんですが、彼の映画作品とはまた違った楽しさがあって。

カメラアングルも照明もラフでナチュラル。映画的な作り込んだ動画ではないんですけど、そういう感じも良くて。

僕もYouTubeを配信してるんですが、ああいう感じの動画も制作してみたら楽しそうですよね。

ーオモチャのピアノやオルゴール、そしてたくさんの楽器や機材がありますが、いつもどんな基準で選んでいますか?

音や機能よりもルックス重視で選んでます(笑)

常に視界に入るものだしモチベーションが上がるようなデザインの方がやっぱりいい。

ちょっと違うなって思ったものは自分で手を加えてカスタムすることもあります。

例えばこの機材はグリップが全部黒だったんだけど、カラフルなグリップに付け替えたり、他にも壁面をDIYして楽器やコードを収納したり、機材がたくさん載っているテーブルもコードがゴチャゴチャしてると見た目も悪いし、コードを引っ掛けてしまうこともあるので作業台の下に収納できるようにDIYしました。

ふとした瞬間に音楽が浮かんだ時も、準備に手間取ったりしてるとイメージが薄れていいアイデアがこぼれ落ちてしまう。なんとか思い出して再現しようとしてもニュアンスが違うものになってしまったり。

そうならないように、いつアイデアが浮かんでもいいようにメインの機材はスイッチひとつでスタートできるようにしてます。

わざわざカスタムしなくても今はワンクリックで簡単に便利なものがなんでも買えるとは思うんです。

でも、工夫をしながら自分で作ったものには完成するまでのストーリーが生まれる。僕はそういうストーリーがある方が好きなんです。

ー 大事にしているルーティーン ー

いつもいろんなことを同時進行で考えている事が多いので、アウトプットがスムーズにいくように1日30分でも良いからひとりになる時間を作るようにしてます。

ニュートラルになる為にリセットする時間があるとセルフコントロールが上手くいくし、いいアイデアも浮かんでくる。

そうやってオフを用意することは大事にしてます。

自分で自分を楽しませることができると毎日が楽しくなる

学校の先生をしていた時に「大人になったら遊べなくなるから今のうち遊んでおいた方がいい」っていう人がいて。なんでそんなこと言うんだろう?って不思議に思ったんです。

だって自分の視点次第でどんな事も楽しむことにつながっていくと思うし、何歳でも全力で遊んで楽しむこともできると思うんだよね。

僕だったら子供達に「大人になるってもっと自由で楽しいことだよ」って伝えたい。

自分で自分を楽しませることができると毎日が楽しくなるって伝える方が絶対に良い。毎日を楽しくするのは自分次第なはずだから。

ー今後はどんな活動をしていく予定ですか?

久しぶりにライブをしたり、You Tubeの動画制作もいろんなアイデアを試しながら発信していきたいですね。

まだまだやってみたい事がたくさんあるので、これからも僕の中の音楽をたくさん届けられたら良いなって思ってます。

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