時が経つほど味わいを深めていく金属『真鍮』
今回は、その真鍮で様々なアイテムを作り出す『K&D MARKET.』の近藤竜太郎さんにインタビュー
朗らかで真っ直ぐな近藤さんに「今に至るまでのお話」とワクワクするアイテムを次々と生み出すバイタリティの源についてお伺いしました。ぜひお楽しみ下さい!
ー初めてご出店する時、どんな事を準備されましたか?
まずは『リング』『バングル』『ピアス』などのアクセサリーを作りました!
それをどうやって陳列するのか。値段はいくらくらいなのか。
訳の分からないまま、部屋にあるものを持ち出して出店先でレイアウトしました。
その時は、通りすがりのおっちゃんに「ごちゃごちゃして見づらいなー」って言われました(笑)
作品は作れるようになったけど、販売するためのスキルや経験値が全くないことに心折れましたね。
その後も課題が山積みで、その都度ひとつひとつ乗り越えていき大変ではあったんですけど
『新しい世界』に踏み込んだことで、いろんな人との繋がりが一気に増えて沢山の刺激をもらいながら楽しんでやってました。
ー『K&DMARKET.』の店名には、どんな由来がありますか?
ストレートに、コンドウです。(笑)コン&ドウ。
カッコいい名前だったり、おしゃれな名前も候補にあったんですけど、どれも「らしくなぁ」と思って。
それと、家業の『近藤ハガネ商店』を自分なりのカタチで残したいと思っていたのもあって、『コンドウ』は使いたかったんです。
そこに商店の意味合いを合わせて『K&D MERKET.』にしました。
―印象的な金槌のロゴデザインは、どのように出来たのですか?
店名が決まって次はロゴが欲しいと思ったのでデザイナーの友人に頼みました。
その後、半年くらい過ぎたあたりで『やっぱり自分でやらないと気が済まない気持ち』が沸いてきてしまい、友人に謝って初めて自分でロゴデザインをすることになります。
「一目でわかるアイコンがいいな」と思って金槌のイラストを使うことを決め、1年くらいちょこちょこ変えてを繰り返しようやく今の形に決まりました。
ーブランドコンセプトは何ですか?
[ 一生モノのオリジナルへ ] というのがブランドコンセプトです。
モノに溢れた現代で、それでもまだ作り続けることの矛盾。
ずっとモヤモヤしていたんです。この活動は意味があることなのかな?って。
でも、ぼくたちが想いを乗せて手作りしているものや体験として提供しているものは、簡単には壊れないし、安くもない。
真鍮は『時間とともに経年変化をもたらし、徐々に味わい深くなる』という特徴があり、作り手の顔が見えている分、捨てにくい。
これって大量生産、大量消費の真逆にいて『K&D MARKET.』が真鍮専門店と名乗り、お客様の暮らしやシーンに馴染む真鍮商品をお届けすることで、少しでも無駄な消費の循環を止めることが出来るのかな?なんて考えたりして。
もちろんそれらを否定するつもりは全くないですが、ファストなもので持ち物を埋めてしまうのではなくて、『ひとつひとつを長く使い、育てる』という価値観を広げていきたいなと思ってます。時間が経つほどに持ち主のオリジナルへと変化し『一生モノの価値』となる。そんなイメージです。
ー立ち上げ当初の苦労などありますか?
好奇心のまま進み始めて1年くらい経ったころ、物事は順調に進んでいるように見えるけど、楽しい!うれしい!の先に「なんのために作り続けるんだろう?」っていう悩みが出はじめたんです。
製作を続ける意味や価値観、それこそコンセプトや方向性が定まらず模索する日々が長く続きました。
ーその日々を打破するきっかけは、どんな事だったんですか?
妻の存在です。
出店を始めて一年くらいの頃、ラフティングがきっかけで妻のゆっこと出会い、2人でお店に立つ機会が増えました。
店頭は男一人ぽつんといるよりも断然明るくなり、そうすると妻がつけているアクセサリーが不思議と次々と売れていくんですよね。
この出来事をきっかけに、それ以降の製作に大きな変化が起こります。
これまでは自分が作れそうなものを思いつくままに作っていたのですが、アクセサリーに関しては『妻が身に付けたいものを作る』という考えに変わりました!一番身近な存在がターゲットになってくれたので、気持ちがとても楽になりました。
―K&D MARKET.といえば『ワークショップ』ですが、始めた経緯を教えてください。
2人での出店がしばらく続くんですけど、そもそもじっと待ってるのが性に合わなかったんです(笑)
いくつか試した結果「体験型のものづくりワークショップにしよう!」となりました!
いま思えばこの『ワークショップ』というのが自分たちにも時代にも合っていて、僕は「ラフティングインストラクター」、ゆっこは「幼稚園の体育の先生」だった事もあり「コミュニケーションしながら導くスタイルが自分達らしい!」と気付きました。
『ワークショップ』はK&D MARKET.が進む方向を決めるきっかけになってくれましたね。
ー出店場所はどのように決めていますか?
つながりのある場所や出店者さんが誘ってくださったり、直接お願いしたりしています。
その中でも、毎月一回お邪魔している一宮の『Neji cafe』さんとの出会いはすごく大きくて。
「販売とワークショップをやりたいです!」って話したら「自由にお店使ってー」って言って下さって。それからもう5年くらいお世話になってます。
Nejiさんのご協力もあって友人やInstagram経由で『物販+ワークショップ』というK&D MARKET.のスタイルが少しずつ浸透されていきました。
ー2人でのスタイルに変わって、制作する時に意見が合わない時はどうされてますか?
基本的に、出たアイデアは全肯定で、まず作ってみます。
そこから改善していくので「意見が合わない」とか最初から「これは違う」っていう事にあんまりならないですね。
誰でもそうだと思いますが、否定されちゃうと次にアイデア出すの怖くなっちゃうじゃないですか?
アイデアが出ないのが一番ダメなので、迷わず全肯定です。
―さまざまな商品はどのように生まれますか?お蔵入りになったものはありますか?
アクセサリーについては、1年の売れ行きを見て動きの少ないものは廃止して、その時のインスピレーションで新たに生み出すというのを繰り返してますね。
雑貨類は、「自分達が使うかどうか?実際使ってみてどうか?」というのが大きな指標になっていて自分達や近しい人達が使わないものは商品化しないです。
『ペーパーナイフ』とか『キャンドルホルダー』などの作ってはみたものの、自分たちが使わないものを自信もってオススメすることができないので、ボツになった作品は山ほどあります(笑)
ーアクセサリー以外のアイテムも広がりがありますが、それぞれどんな事がきっかけで生まれましたか?
2020年1月から『ウェディングアイテム』の販売をスタートしました!きっかけは、自分達の結婚式の引き出物に、真鍮の『オリジナルカードスタンド』を作った事です。
この時は販売するなんて思ってなくて「ゲストのみんなに自分達らしいプレゼントがしたいな」っていう思いで作りました。
『結婚証明書』も「友達みんなが参加出来るのがいいよね」という想いから、参列してくださった方に協力してもらいワークショップスタイルの僕達らしいものになりました。
この『結婚証明書』もアレンジを加えて今の『結婚証明書』のカタチへと繋がり、ウエディングアイテムとして誕生。
僕達の経験からこうして商品化されたアイテムを、大切な日に選んでもらえる事は心から嬉しいです。
そんなこと言っておいてなんですが(笑)実は僕『結婚式したくない派』だったんですよね。
緊張もするし、言葉は悪いかも知れないのですが、なんだか見世物みたいなイメージもあって。気恥ずかしい気持ちから「身内だけでいいかも」と思っていて。
でも、実際にやってみて気付いたのは、結婚式って僕達2人だけのものじゃなくて、一緒に笑ったり泣いたりしてくれた人に感謝を伝えられる場でもあり、幸せな時間をみんなで共有できる特別なものだったんだと思って。
僕達のために駆けつけてくれて「おめでとう!」とお祝いの言葉をかけてくれた友人や、ずっと見守ってくれた家族の笑顔、自分達の大切な人に囲まれて過ごす『幸せしかない時間』は本当に最高な思い出で、今も思い出す度に「こんな幸せな日は2度とない」「結婚式を挙げて良かった!」と素直に思うんですよね。だからこそ、これからの皆さんにも結婚式を楽しんでいただきたいと思っていて。
ただ、ここ1~2年はコロナ禍で結婚式の延期や中止の決断を迫られているご夫婦が沢山いらっしゃって。みなさん、やりきれない気持ちになってしまっていると思うんです。
僕達も何か力になれたらとずっと思っていて。K&D MARKET.にご依頼頂いた新郎新婦には『真鍮ウェディングアイテム』を通して結婚式に向け準備する時間もワクワクするような前向きなイメージをもってもらえる様に全力でサポートしたい!と思っています。
もうひとつが『手作り結婚指輪』のスタートです。
自分たち結婚指輪をK18イエローゴールドという貴金属素材で作ったのがきっかけです。
手作り結婚指輪をはじめようと準備をしていて、まだ告知もしてない頃に、相談に来てくれたご夫婦がいました。
それがお菓子とCoffeeのお店『haru.』を営んでいる、りょうたろう君とさくらちゃんでした。
イベント出店先で数回お会いしたことのある2人でしたが
実績もまだない僕たちのところで「指輪を作りたい!」と言ってくれて。
それはもう喜んで1組目のお客さんになっていただきました!本当に本当に嬉しくて!2人には大きな縁を感じました。
このウェディングのワークショップをスタートした事で、ワークショップスペースとして使っていた会社事務所の1.5畳ほどのスペースに定期的にお客様が来て下さる様になり、スペース拡大も兼ねたアトリエの構想が浮かびました。
真鍮製品のショールームになるようなワークショップスペースと、製作から梱包・発送までを一貫して行えるアトリエスペースをイメージし、Nejiさんの内装リノベーションを手掛けられた『reno-cube』さんにデザイン、施工をお願いしました。
床をはがしたり壁面塗装をしたりと、自分達で出来る事は積極的に関わりながら、2021年1月にアトリエが完成しました!
現在は予約制で新郎新婦様を招いておこなう結婚指輪作りや結婚証明書製作など、ウェディングアイテムのワークショップをメインで開催してます。
お越しいただく2人にとって特別で大切な思い出に残る日になると思うので、1組のみの完全貸し切りで開催しています。
ーその後の新商品などはありますか?
コロナ禍でマスク生活が日常化したのもあって、オリジナルの『マスクコード』も誕生しました。
1番新しい新商品でいうと『オリジナルシェラカップ』ですね。
この夏には蚊取り線香皿『かとせん』がおすすめです!
もちろんこれら全て自分達が使っていてるアイテムです。
ー今後の『K&DMARKET.』の新しい展開はありますか?
2021年からはインテリアや表札、キャンプ用品、コーヒー用品などの生活を豊かにする『リビングアイテム』も充実させています。
『K&D MARKET.』がスタートして今年で6年になるんですけど「いつかはやりたい…。と思い描いていたものが出揃ったな」という感覚です。
作った以上はしっかりとお客様の元へお届けしたいので『MARKET』『 WEDDING』『 LIVING』すべてが上手く重なりながら広がっていくようなイメージで運営していきたいと思っています。
ここ数年で自分自身の環境や生活がものすごく変化があって、結婚して子供も産まれました。
自分一人ではなくなった分、今後もその時々に合わせて変化していかなくちゃいけないと思うんです。5~10年後を思い描いた時に、次世代に『伝える・教える』というのは必然的なんだろうなと。
インストラクターやワークショップを通じて得た『コミュニケーションスキル』や『伝わる話し方』などをモノづくりをもとに伝えていけたらなと思っています。
「子供会でワークショップをやれませんか?」というお話もいただいているので、新たにチャレンジして行こう!って思ってます。
去年からK&Dファミリーとして僕の同級生の『だいき』が入ってくれて、心強い味方が増えました!
りゅうたろう、ゆっこ、いちか、そしてだいき!家族と気の合う仲間達と一緒に、ワクワクする面白い方へ進んでいきたいと思います!これから『K&D MARKET.』がどんな風に育っていくのか、とても楽しみです!
新型コロナウィルス感染症対策について
『アルコール消毒』『三密の回避』『検温』『マスクの着用』など
感染症対策を徹底した上で取材・撮影を行なっております。
また、撮影対象者のみマスクを外して撮影しておりますが
充分な距離を保った上で撮影させて頂いております。