新進気鋭なアーティストの名古屋初EXHIBITIONを次々と成功させ、新しいカルチャーの発信地として目が離せない『OFF THE RECORD』
今回はその『OFF THE RECORD』の店主、GOさんにインタビュー。『go-kinsella 』名義でレコードコレクターとしても認知の高いGOさんのクリエイトすることの追求心やバイタリティー溢れるROOTS OF STORYを是非お楽しみ下さい!
ー今回は取材を引き受けてくださりありがとうございます。では早速、幼少期や学生時代のお話からお聞かせ下さい。
1979年、愛知県名古屋市生まれです。
子供の頃はハキハキとした明るく元気いっぱいなタイプで、近所で捨てられていたガラクタを拾い集めて友達と秘密基地を作って遊んだりしてました。ヤンチャで目立ちたがりな子供で、THEお調子者っていう感じでした(笑)スポーツも好きで、小中高とずっとサッカーに打ち込んでいてましたね。
高校生になるとファッションへの興味もどんどん強くなっていって、良いなって思った洋服を買うだけじゃなく自分で作った洋服を着たりリメイクしたり、人と違ったファッションを自分なりに着こなすことに夢中でした。
ファッションフリークな友人達とファッションショーを開催したりと、学生時代もクリエイトすることの楽しさを常に全身で楽しんでましたね。
そんな風にファッションに夢中になる中で、『美容』の面白さを感じ始めて興味がすごく膨らんでいって。自分の髪を自分で切ってみたり、サッカー部の仲間達が「髪を切って欲しい」と言ってくれて、髪を切らせてもらってたんです。
将来のことを考え始めた時に「自分の好きな事を仕事にしたい」と思って『ファッションの道』か『美容の道』に進むのか、すごく迷ったんですよね。
どちらも自分の中で熱量が高かったのでなかなか決めれずにいたのですが、サッカー部の仲間達の髪を切らせてもらった時に喜んでもらえたあの時の気持ちが忘れられなくて。直感的に「こっちだな」って感じて美容専門学校への進学を決めました。
美容学校卒業後は『HAIR ICI』に就職。コツコツと積み重ねて27歳で『店長』に就任しました。
その頃から色々とお店の事を任せてもらえるようになって、今までとは違う仕事に対する新しいスイッチが入った感覚が芽生えましたね。
僕の場合は『集客』を上げていくことが自分の中で大きな課題としてありました。
それと共にブランディングに対する思いもどんどん強くなっていき「どうしたらどこもやっていない新しい手法で、より多くのお客様に喜んでもらえるサロンになれるのか?」と常に頭の中で考える日々が始まりました。
髪を切るだけじゃない、生活とカルチャーが融合した『新しい場所』になる。
まず「何か新しい切り口は無いか?」って考えた時に『異業種とコラボしたら面白いかも』っていう事がふと閃いて。
良い化学反応がおきて、新しい可能性や新たな価値観が生まれるんじゃないか?って直感で感じたんですよね。
美容の枠だけじゃなく『衣・食・住・美』を繋げて異業種とセッションすることで、サロン発信でライフスタイル全体を含めたアプローチが出来たら面白いんじゃないかと思ったんです。
髪を切るだけじゃない、生活とカルチャーが融合した『新しい場所』になる。
「これ絶対いい!」って思いついた時に、自分の中で確信が生まれて。
その時に真っ先に連絡したのがヴィンテージショップ『STORE IN FACTORY』の原佳希君でした。高校の同級生でもある彼に協力をお願いしてサロンに『STORE IN FACTORY』の家具や雑貨をお店のインテリアとしてディスプレイしてもらい、商品を気に入ってくれたお客様がそのまま購入できるような委託販売スタイルを始めました。
まだ探り探りな感触ではあったんですが、『STORE IN FACTORY』の商品をきっかけにお客様に楽しんでもらえたり、喜んでもらえたことはもちろん、お互いに紹介し合う相乗効果みたいなものが生まれました。
このコラボレーションが僕自身すごく大きなターニングポイントとなった事は間違いないですね。「これだ!」っていう手応えを感じました。
『STORE IN FACTORY』とのコラボレーションをきっかけに、『HAIR ICI presents』で異業種の皆さんを一日で集めたマーケットイベント『ICI MARKET』を開催したのが10年くらい前ですね。
まずはイベント出店を依頼するところから始めたのですが、当時はまだ出店してくださる方との繋がりもなくて、まさにゼロからのスタート。
企画書を制作して一件一件ご挨拶に伺ってオファーさせていただくところから始まりました。
一緒にイベントを盛り上げてくださる方との出会いにも恵まれて、初回のイベントは無事盛況に終えることができました。
その後もミュージシャンやペインター、飲食店やアパレルショップなど、各方面いろんな出店者様にご尽力頂きながら、サロン目線でのライフスタイルを提案したイベントを開催し「HAIR ICIでまた何か面白いことをやっているぞ」って思ってもらえるような、そういうSPECIALがあるサロンとして知っていただける機会もだんだんと増えていったかなと感じています。
ー『go_kinsella』名義でもご活躍されていますが、どんなことがきっかけで始められたんですか?
中学時代に遡るのですが『BOOWY』との出会いがキッカケですね(笑)。その後高校生になってからは徐々に『ハードコア』や『パンク』にハマっていったんです。
そこから、どんどん深掘りしていく中で『エモーショナルハードコア』に辿り着いて衝撃を受けたんです。それが自分の人生において大きな出会いでしたね。
90年代にハードコアから自然派生的に生まれた所謂エモというジャンルなんですが、音楽性はもちろん、他とは違う手仕事で作られたレコードジャケットのアートワークにも引き込まれていって。ひとつひとつのジャケットを自分達でDIYで作っていたり、素材が段ボールやクラフト紙で作られていて、裏側を見るとそれぞれデザインが違ってたりするんですよね。
その世界観がすごく良くて知れば知るほど好きになって。
中にはコラージュの画集や写真が入った今でいうZINEみたいなものが添えられていたりもして、それもまた自分達でクラフトしたものだったりと、表現方法の一つとしてそういうDIY精神にもすごくグッときましたね。
そういう感じで、最初は1人で単なるコレクターとして深掘りしてしながら楽しんでいました。
5年ほど前になりますが東京に『HAIR ICI』中目黒店FēnをOPENし、東京へよく足を運ぶようになったのですが『go_kinsella』アカウントで繋がっていた東京の『エモ好き』な音楽仲間ともよく交流するようになって、その仲間の1人『のら珈琲』の森くんに「オリジナルでMIXカセットテープを作りませんか?」と声をかけてもらえて。
その事がきっかけになってMIXカセットテープの製作をすることになりました。
ーなぜ、CDやデータ音源ではなく『カセットテープ』だったんですか?
元々『のら珈琲』さんがカセットテープのレーベルをやっていたというのもあるんですが、昔からデモテープを聞いて育った人間としてはカセットテープならではの音質がすごく好きだったのと、あのチープ感満載のフォルムや軽さ、振ったらカシャカシャいう所とか、デジタル化していく時流に逆行したあのアナログ感とか最高ですよね。あとは手軽に必要な数だけをDIYで製作できることも魅力でした。
このカセットテープの製作をきっかけに音楽仲間や新しいクリエイターとの出会いも増えイベントに参加してもらったりと、人から人へと新たな広がりもどんどん生まれていきました。
特に東京のサロンではギャラリー展開もしていた事もあり、音楽を通し多種多様なジャンルのアーティストとの新たな出会いが生まれたことは僕にとって大きな財産になってます。
オリジナルカセットテープ制作も第4弾まで続いていて、いつの間にかライフワークのひとつに。
そんな流れもあってオフレコではカセットテープカルチャーを愛するショップやレーベルが集結したイベントも開催し、大反響を頂きました。
『今までとは違うカタチの新しいコミュニティーを作りたかった』
ある日、お隣の『KAKUOZAN LARDER』さんから空き物件の連絡を頂いた事がきっかけで、駅からも近く『覚王山』という好立地な物件だったので抑えることにしました。
その時は「サロン展開する場所にどうかな?」という感じだったんですが「今までとは違うカタチの新しいコミュニティーを作りたい」という思いが湧き上がってきて。
『立ち飲み屋』や『レンタルキッチン』として活用するのもいいかな?と考えていたのですが、今までもICIの中でギャラリーを運用していた事を活かして『カルチャー』を軸にしたものが面白いんじゃないか?と思って『ギャラリー&バー』のカタチになりました。
内装は全てチャーリーさんにお任せしました。着々と工事が進む中、最後の最後まで床材について決まらなかったんです。塗装するのか?床材を貼るのか?色々と話し合っていた時に「砂を敷くのはどうだろう?」とチャーリーさんが閃いて。
あまりの良いアイデアに「それ!いきましょう!」と即決したんです(笑)
室内で床材が砂なんてなかなかないですし、子供の時に秘密基地を作っていた時みたいに、すごくワクワクしました。今やトレードマークとして砂床が存在しているので、本当に閃いてくださったチャーリーさんには感謝です。
EXHIBITIONのたびにアーティストの方にサインを入れていただいているオフレコウォールも唯一無二のアートアイコンとなりつつあるので、ご来場の際には是非こちらもご覧いただけると嬉しいです。
ーコロナ禍でのOPENは大きな決断だったと思うのですが、その決断に向かわせたものはどんな事でしたか?
『OFF THE RECORD』のOPEN準備が2019年12月からスタートしたのですが、当初OPEN予定だった2020年3月辺りから影響が出始めて、OPENも状況を踏まえて一旦延期する事にしました。
一番難しかったのは「人を集めちゃいけない」っていう事でしたね。
人が集う場所として準備していましたし、バーとしての営業もお酒の提供にSTOPがかかってしまうと厳しい。
今までは1人でも多くの人を集める事が課題でしたが、それまで培ってきた集客する為のノウハウが意味を持たない。
今までとは真逆の状況に戸惑いましたが、新しいやり方を生み出していかないと先に進めない。まずはお客様の安全安心を第一に『消毒』や』『検温器』『空気清浄機』の設置をして、入場制限や人数制限を設けOPENする為の準備を進めました。
お陰様で順調に準備が整い、2020年6月20日に無事OPEN。
お客様もマナーを守ってくださる方ばかりで、開催中のトラブルなどもなく良いスタートで駆け出すことが出来ました。
ーイベントをブッキングするときに気をつけていることはありますか?
『名古屋初』っていうフレッシュ感は、すごく大切にしてます。
それと、みんなが知っているアーティストも『OFF THE RECORD』をきっかけに出会うアーティストも、どちらもバランス良く組んでいけるように心がけています。あとは、音楽とアートって密接な関係だと思うんですが、音楽を通じて出会った友達でアーティストとして活動している人も沢山いるので、そういう繋がりから声を掛けさせてもらうケースも多いですね。
それぞれのオープニングイベントの時にはアーティストに合わせたミュージシャンやDJの方、そして美味しいFOODをMIXして、その日にしか生まれないLIVE感を楽しんでもらえるようにしています。
集まった方達によって出来上がるグルーヴ感は痺れるものがあるので、ぜひ体感しに遊びに来てください!
ースタートされる際にシークレットギャラリーとして始めたのはなぜですか?
『HARI ICI』っていうフィルターを通してしまうととフレッシュ感に掛けてしまう気がしたんです。
「また、『HARI ICI』が何かを始めたぞ」っていう、ワクワクはあってもそこに新鮮さがないなと。もっとフラットな感じを大切にしたかったし、ゼロから新しいことを始めたかったのが理由です。なのであえて僕自身の名前も出さないようにしてました。
そもそも『OFF THE RECORD』という名前の由来も"謎のギャラリー"というコンセプトから来ているんですけど、実は最初はインスピレーションで『NO COMMENT』っていう名前にする予定だったんです。その名前もすごく気に入っていたんですが、よくよく考えたら最近「NO 〜」って名前が多いなという事に気付いて、それに乗っかる感じが嫌だったので断念ました(笑)その後悩んだんですが、ふと思いついたオフレコという言葉を調べてみたら「OFF THE RECORD =記録しない(非公開)」って出てきて「最高じゃん!」ってなって即決しましたね。
そんなこんなで、もうすぐOPENから2年。
OPEN当初、2年のLimited editionとアナウンスしていた事もあって「終わってしまうのですか?」とお声掛けも頂くのですが、結果からいうと今後も『OFF THE RECORD』を続けていこうと思っています!
コロナ禍での2年で終わるわけにはいかない気持ちや、これから待っている沢山の出会いにもワクワクしていますし、何よりも『OFF THE RECORD』のことを楽しみにしてくださる方がいるので、カルチャーを発信するコミュニティーとして色んな化学反応を起こしながら、これからも続けていこうと思います!
「僕自身が楽しむことってすごく大切だし、自分がワクワクしないものは誰も楽しませることはできない」
振り返ってみると、今まで経験してきた事がひとつも無駄になっていなくて、気付くと積み重ねてきたこと全てがつながってるんですよね。やっぱりまず僕自身が楽しむことってすごく大切だし、自分がワクワクしないものは誰も楽しませることはできないなって思うんです。
ファッションも音楽もアートも理屈じゃなくドキドキワクワクする感覚を信じて『楽しい』をより多くの人と分かち合う。そしてその新しい"何か"を探していく。
そこはずっと僕の中でブレずに軸としてあって、そういう自分のスタンダードをくっつけたりブラシュアップしながら続けてきた先に今があったという感じで。
そしてその楽しさを一緒に共有できる仲間達にも恵まれている事や、こんな風にスタッフの自発的思考を尊重し信じてチャレンジさせてくれるオーナーにも心から感謝してます。
これからも、その想いと出会えた仲間達を大切にして、ワクワクしながら自分らしく突き進んでいこうと思います!
新型コロナウィルス感染症対策について
『アルコール消毒』『三密の回避』『検温』『マスクの着用』など
感染症対策を徹底した上で取材・撮影を行なっております。
また、撮影対象者のみマスクを外して撮影しておりますが
充分な距離を保った上で撮影させて頂いております。